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「あなたにとっての“サステナブル”とは?」~ARASのビジョンを語り合った空間~

2021年12月上旬、ARASのInstagramでライブ配信を行った。ARAS開発者の石川工業専務取締役の石川勤さんと、プロダクトデザインを手掛けるクリエイティブチームsecca代表の上町達也さんがARASのビジョン、そして、サステナブルの取り組みについて語った。

「あなたにとってのサステナブルとは?」

その問いかけに、視聴者の皆さんからもたくさんコメントが届く。リアルタイムで登壇者と交流しながら、共に“サステナブル”について考える場となった。最後には、ARASの新シリーズ「サステナブルコレクション」の発表が行われ、ライブは盛り上がりを見せた。

文 / ファシリテーター:嶋津(ダイアログ・デザイナー)

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ARASが生まれたきっかけ

当初、「テーブルウェア」を軸にすることさえ決まっていなかった。樹脂を通して文化をつくり、世界をより良く変えてゆく。生活に寄り添い、価値を共有できるアイテムは何か。そこには、数えきれないほどの模索と思索があった。

嶋津
まず、視聴者の皆さんにARASというブランドのコンセプトを共有できればと思っています。そのためには、ブランドが生まれたストーリーからお伺いすることが最もわかりやすいと思うのですが、きっかけから誕生までのお話をお聴かせください。



上町
ブランド立ち上げる2年ほど前から、デザイナーとして石川樹脂工業さんと関わらせていただいていました。当初、議論していたことは環境問題について。世間では、海洋ゴミの問題に代表されるプラスチックの存在意義が問われていた時期でした。

印象に流されるのではなく、「本質的な原因は何か」を立ち止まって丁寧に考えなければいけません。“プラスチック”という素材に全ての責任を負わせることは、少し短絡的ではないか。問題はそこではなく、「モノを捨てる行為」や「海に流される仕組み」にあるのではないだろうか。

環境や人にとって本当の意味で“良い未来”とは何か。僕たちは“樹脂”という素材で何ができるのか。樹脂の持つ価値や可能性を、もう一度丁寧に見直し世の中と紡ぎ直す。石川さんと議論を重ねながら、僕自身も多くのことを学んでゆきました。そして、僕たちの想いや思考を純度高く共有するためには、新しく1からブランドを立ち上げ、世の中に届けた方がより真価が伝わるのではないかという発想に至りました。



石川
コンセプトづくりに1年以上かけています。ARASの立ち上げにおいて、最も時間のかかったポイントです。テーブルウェアに行き着くまでにも、多くの議論を重ねてきました。

石川樹脂工業は、輪島塗や山中塗などの漆器の木地づくりにルーツがあります。また、金沢という都市は「食」の一大拠点でもある。私たちにも深い愛着があり、文化として「食」との親和性が高い。「食」と「サステナブル」を組み合わせ、私たちらしいブランドを育てていくことに決めました。



嶋津
ブランドが生まれてコンセプトが決まったのではなく、明確なコンセプトが先にありブランドが立ち上がった。芯のあるコンセプトだから、次々とプロダクトに落とし込んでいけるのですね。“ARAS”という思想は、テーブルウェアだけでなく、ライフスタイルや、今回のライブ空間といったコミュニケーションにもつながっている。

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視聴者からのコメントとして、数々の「わたしにとってのサステナブル」が届いた。

「あるものを大切に扱い、使い捨てしないこと」、「レジ袋は控えて、エコバックを使用すること」、「伝統を継承し、文化を次世代に伝えること」。さらに、ARASユーザーの6歳の子どもは「ゴミはちゃんとゴミ箱に捨てる、おもちゃで遊んだ後は元の場所へ戻す」と答えてくれた。

一人ひとりそれぞれの“サステナブル”がある。そして、この問いについて考えることが既に一つの“サステナブル”であるのかもしれない。

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モノづくりから見たサステナブル

嶋津
コメントを読ませていただくだけで多様なサステナブルが存在することにあらためて気付かされます。モノづくりの観点から、二人にとってのサステナブルについても聴かせていただけますか?

石川
この点に関して、個人的に強い想いがあります。私には、外資系大手企業から父の会社(石川樹脂工業)に戻ってきたという背景があります。

“サステナブル”と言えば、多くの人はまず地球環境やエコについて思い浮かべるのではないでしょうか。先ほどのコメントで「次世代に伝える」とありましたが、私はその点を忘れてはいけないと思っています。皆さんは、私たちモノづくりの人間が直面している問題をご存知でしょうか。それは、後継者問題です。



事業継承が進まない。理由はシンプルで、後継ぎがいないのではなく、事業を継ぐほどの儲けがないからです。下請け会社は不当に買い叩かれ、最低賃金ぎりぎりのところでなんとか工面しています。これらの中小企業が、日本のモノづくり、ないしは私たちの生活を支えている。私が石川樹脂工業へ戻ってきた時、その現状を知り、大きなショックを受けました。この課題を解決することは、日本のモノづくりを次世代に伝えるためには不可欠です。

ARASで取り組んでいるのは、ロボットやAIによる作業の自動化です。「人の手」を不用意に入れないことで省人化を進め、人が“人らしく”、人としての価値を発揮できるエリアでモノづくりに集中することを実現しました。



労働集約型のビジネスから脱却することで、最低賃金以上の給料を出せるようになります。弊社でも、給料を上げる努力や休日を増やす試みによって、現状に変化を起こそうとしています。そのような取り組みが周りの企業を触発すれば、日本のモノづくりを次世代につなげるモデルケースになるのではないか。地球環境の問題と並列して、「モノづくりを次世代へ継承すること」に、積極的に取り組んでいます。

上町
僕の考えるサステナブルは、「価値の持続」です。その人、その人にとってのモノを愛せる時間。愛せるモノは、大事にします。大事にすると、永く使う。そうすると、モノの消費は適量になってゆき、結果的にモノづくりも適量になる。

元々、僕たちには一つのモノを大事にする気質が当たり前にあったはずで。それゆえ、モノを買う時に対価の裏にあることまで気を配ることができていた。つくる人のことを考えて、対価を払って手に入れ、またつくる人の顔が見えて、また大事にして……その連鎖が、モノを持続させていく。それがサステナブルだと思っています。

ARASが大事にしている考えは、お客様一人ひとりの“一期一会”になること。闇雲に量を生産し、販売することではありません。量産=均質な製品をつくる常識から疑い、量産であっても一期一会を生む血の通ったものづくりを目指しました。

石川
たとえば、こちらのカトラリー。実は、柄の部分は再生材を使用しており、まだら模様になっています。これらは、実は私たちプラスチック製造の中では“不良品”として扱われる種類のモノです。本来は捨てられる製品───なぜ、捨てられるのかというと、見た目が安定していないから。量産品の場合、一つひとつが同じデザインでなければ許されない。

ARASは、その“本来、捨てられるモノ”を、あえて商品化のレベルへと昇華させています。上町さんが仰ったように、それぞれの表情が微妙に異なり、“一期一会”の模様になっている。ARASの隠れたコンセプトでもあります。



上町
誰が決めたわけでもないのですが、金型を使用した工業製品の場合、「品質を安定させること(表情を含む)」が正義になっていますよね。また、大量生産という過程の中で再現性のある正確な色、カタチを均質にコントロールする行為が「プロダクトデザイン」の役割と捉える側面もありました。そこに疑問を抱いた。

ARASでは、工芸品の現象によって生まれる"ゆらぎ"や"ムラ"にヒントを得て、工業用素材が自然に生み出す現象を制御しようとせず、引き出すという発想で開発をしました。結果として生産性を落とさず個々に個性を与え、お客様が潜在的に感じる「選ぶ楽しさ」や「自分だけのモノ」と思える気持ちと結びつけていくことができれば、永く愛でられるモノになるはずだ、と信じて。


嶋津
石川さんの「企業の仕組みのアップデート」、上町さんの「“永く使える”ための、愛されるモノへの探求」。お二人にお話を聴くまで、その課題の存在自体をなんとなく見過ごしていたような気がします。一つひとつの模様が異なる製品を“不良品”と捉えるのか、“愛されるモノ”へと昇華して新しい価値を提示するのかでは、同じ素材を扱っていても、受取り手の体験や物語は大きく変わってきますね。

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視聴者の声をピックアップしながら、開発者とデザイナーの視点から答えていく。セッションの一部を紹介したい。

〈コメント〉
ARASの商品はシンプルかつスタイリッシュで素敵です。カラーがダークなものが多いのは理由があるのでしょうか?

上町
色を決める時に大事にしていることは、あくまで“より良い食体験”を追求すること。器単体としてきれいな色であるということはもちろんですが、食材が盛り付けられた時に「おいしそう」と感じる背景色。

ビビットなお色は、鮮やかであるがゆえに食材の色がくすんで見えます。鈍い色の前に鮮やかな色があると、より艶やかに映る。また、自然界には原色は意外と少ない。食材は有機物です。自然の世界に存在する色の方が相性はいい。食材という主役を引き立てる名脇役に徹しています。



〈コメント〉
ARASのお皿やカトラリーは壊れにくいので、親から子へ受け継がれるし、もらった子どもはうれしいですね。

石川
実際、私も3人の娘を持つ親で、基本的に食卓にはARASの器が並ぶのですが、子どもと一緒のカトラリーやお皿を使えるのはうれしくて。器が、子どもを“子ども扱い”しない。
実は、ここにもARASの隠れたコンセプトがあります。親と子ども、ないしはおじいちゃん、おばあちゃんまで、一緒の食器を使える。そこが伝わっているのがうれしいですね。

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開発者とデザイナーの建設的な対話

印象的だったシーンは、視聴者からの質問に答える石川さんが「上町さんの“むちゃぶり”が難しく…」と話した場面。思わず「どのようなやりとりが交わされているのですか?」と伺った。その一連を知り、二人のモノづくりに対する誠実さを感じた。ARASは、チームの理想的なコミュニケーションの上に成り立っている。

石川
マグカップに関しては、これ以上ない機能性のプロダクトだと思っています。厚みがあり、熱を通しにくいので手に取りやすく、重心が下にあって、洗いやすい形状で、かつ口元は薄く、飲む時の舌触りまで考え抜いて設計されている。



この厚みの差が絶妙で、再現するには難易度が高く、製造する上でかなり苦労しました。特殊製法も編み出しているほどのレベルです。私たちの技術が上がれば上がるほど、seccaさんの要望がそれを少しだけ超えてくる。それも0.5だけ超えるイメージなので、必死に努力すればできてしまう。できるのだけれど、それに伴う労力は計り知れない。

上町
これまでの“樹脂”という素材の使われ方は、陶磁器や硝子でできた器の代用品として扱われてきました。“置き換え”であるから、陶磁器や硝子など“ホンモノ”と呼ばれる器での食体験よりも劣った印象になる。普通に考えれば、薄い形状にする必要はないわけです。

ただ、僕たちは「この素材だから得られる形」を追求することで、“樹脂”の新しい価値を提示することにしました。そのためにも、理想を突き詰めています。

石川樹脂さんに投げかけると、ポジティブな会社なので「できない」とは言わない。まずは「やってみます」という返答がくる。「うまくいかないけれど、こうやったらできるかもしれない…」という対話を重ねながら、妥協のない形状を追求できた。結果として、少しずつ要望は上がっていきますよね(笑)。

嶋津
こよなく建設的な関係性ですね。お話を聴いていて気付いたのですが、コンセプト設計から課題の発見、解決と、上町さんの立ち位置は、単純に“プロダクトデザイナー”というだけではないのですね。

上町
日本では“デザイナー”といえば、「色や形をつくる人」として認識されることが一般的ですが、僕の意識は違います。現状の課題を把握して、未来を描きながら、デザインという“方法”で解決してゆく。意匠を考える前に、クライアントのビジョンを総合的に見て、「最も良い形は何か」を考えるところからはじまります。課題や問いを発見し、それらを明確にした上で、意匠によって解決する。それが、僕の考える“デザイナー”です。

それを仕事として受け入れてくださる企業はまだ少なく、石川樹脂工業さんは当初から、ビジョンやコンセプトをつくるところから頼ってもらえた。その関係性が僕としてはうれしいものでした。ARASが生まれたのも、そのパートナーシップを結べたことが大きかったように思います。

石川
上町さんと僕の共通する部分は、“馬鹿”がつくほど真面目なところだと思っています。「何が正しいのだろう」、「お客さんにとっての価値とは何だろう」と真剣に話し合って、一つひとつ検証してゆく。そこには数えきれないほどの議論と検証の数があります。どちらか一方だけの熱量だけだとしたら、これほどまでに実直で、建設的な議論を続けることはできなかったと思います。

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~サステナブルコレクション~森を守る「杉皮の皿」~

ライブは佳境に入り、ARASの新シリーズ「サステナブルコレクション」が発表された。



上町
ARASのトライタンという素材ではなく、ポリプロピレンという材料を半分使用して、もう半分は天然の杉の皮を使用しています。山の保全や林業の現状には「杉を消費しなければならない」という課題があります。中でも、「杉の皮」には使い道がありません。その素材を使用することで、樹脂使用料を可能な限り削りつつ、環境問題に還元できる。そのような思想でつくりました。

石川
ご覧になっていただくとおわかりの通り、一点一点の表情が異なります。杉の皮は天然物ですので、夏は薄く、冬は厚い。山地によっては、色も厚みも形も匂いも違う。原料として扱うには非常に難易度が高く、そのような意味でも今まで世の中に存在していなかったプロダクトとなります。「これこそがサステナブル」というARASの象徴的な製品となりました。



上町
素材が揺らぐ余白を厳密に設計しています。どれだけ暴れさせて、表情にゆらぎを起こすのか。枠組みは決めて、こだわりをもって設計しています。僕たちが大事にしているのは、環境を守る取り組みや、食体験を豊かにするデザイン、一期一会のためのムラ感など。その内、どれか一つだけが秀でていてもダメで、全体のバランスを考えながら設計しています。このコレクションはまさに環境問題につながり、それがそのまま愛せるモノになる。

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最後に

上町
前職から、ものづくりに関わってきたのですが、独立するにあたり憧れの目標がありました。それは、直接お客様の顔を見て、製品を手渡しすること。一人ひとりと直接コミュニケーションすることは簡単ではありませんが、オンラインの力によって今日のような形が実現しました。この相互関係を大切にしながらモノづくりができているこの状況が幸せです。

お客様の視点を開発にうまく取り入れながら、今後も「愛されるモノ」をつくっていきたい。そして、ARASはそれを最も体現できるブランドでありたいです。

石川
「ARASのそもそものゴールは何だろう?」という話を、時々開発メンバーと語り合います。私たちのゴールは、ARASの商品をお客様に買っていただくことではなく、ARASの商品を使用していただいて、お客様の日常の食生活が少しでも楽しく、豊かになるということ。

私たちの力だけで環境問題が解決するのかというとそんなことは全く思いません。想いを伝え、モノを届け、考えに共感する仲間が増えれば、より大きな動きになる。そこでようやく、社会は少し変わるのかもしれません。

まだまだ至らぬ点は大いにありますが、そこに向かって商品開発をしていきます。ご意見をいただきながら、皆さんと一緒に心地良い食生活をつくっていきたいです。