深皿スクープの裏面形状のアップデートのお知らせ

深皿スクープの裏面形状のアップデートのお知らせ

この度ARASの人気商品「深皿スクープ」の裏面の形状のアップデートを行いました。

※アップデートした深皿スクープは順次入れ替えとなります。

ユーザーのみなさまへの報告として、形状変更の経緯とその想いを開発者の石川勤さんとプロダクトデザイナーの柳井友一さんにお伺いしました。

開発者/石川勤(石川樹脂工業)
プロダクトデザイナー/柳井友一(secca

インタビュアー/ダイアログ・デザイナー嶋津 

深皿スクープの形状変更についての背景

ARASで商品の製造から梱包までを自社工場にて一気通貫で行っています。その中で、大量注文を受けた場合に器を重ねて梱包するオペレーションがあります。間紙やウレタンの緩衝材を挟んで配送しているものの、輸送時の揺れによって器に傷がついてしまうケースがこれまでに何度か発生していました。原因は器の底面のエッジ部分にあり、器同士を重ねた時に負荷がかかることで、それが傷へとつながっていることが判明しました。

 石川:
これまでも梱包の仕様を改善して試行錯誤を続けてきたのですが、チーム内の議論で「器を重ねる時の(器同士の)当たり面自体を改良してはどうか」という意見へと発展しました。スクープ皿をつくった当初、現在ほど大量注文をいただけることは想定していませんでした。有難いことに、ブランドの成長と共に商品を届ける範囲も広がり、そのスケールも大きくなっています。想定を超えれば、新しい問題が起こるのも自然なことです。

そこで今一度、商品を見直すべきだろうという想いから、形状変更へと踏み出しました。また、傷問題を解決することで輸送時のオペレーションはもとより、普段使いをしていただいているユーザーさまへのメリットにもつながります。

 

具体的な変更点

柳井
端的に言えば、丸みを帯びた形状へと変更しています。今までのスクープ皿は、器の安定性を求めるため、テーブルとの接地面積を広く意識し設計した経緯もあり、底面が角張ったカタチをしています。安定性を増すためにつくったエッジが、結果的に器同士を重ねた時負荷へとつながっていました。その底面のエッジの部分をなめらかな曲線にして、使い心地に影響しない重心バランスへとリデザインしました

形状変更による三つのメリット

傷がつきづらい形状に 

ARASではサステナブルのポリシーから過剰梱包は行わず、可能な限り簡易包装でお届けすることを心がけています。「1000回落としても割れない」という樹脂由来の丈夫さ魅力に加え形状がなめらかになったことで収納時のスタッキングはもちろんのこと輸送時に傷がつきづらい仕様となりました。

手のひらへのフィット感
器の底面のエッジがなくなり丸みを帯びたことにより手のひらにフィットし、配膳やウォッシングの際なめらかな手の所作へとつながります。

佇まいの美しさ 
成形時に素材の厚みに偏りが生まれた部分のことを「偏肉」と呼びます。以前のモデルでは、器の底面が局所的な肉厚になっていたため器に「ヒケ」と呼ばれる成形収縮によって生じるへこみが生じていました。成形時に偶然生まれる“ゆらぎ”を含めて器の表情として生かしていた背景もあるのですが、今回の形状変更によって偏肉部分が緩和されたことにより器のヒケが目立たなくなり、全体の意匠も美しさを引き立たせるバランスのとれたデザインに仕上がりました。

改良への想い 

柳井
スクープこの10年間で、何度もマイナーチェンジを重ねてきました。ARASとしての意匠になる前のseccaとしての器でも、アップデートを繰り返してきた経緯があります。陶器は縁が欠けやすいため、磁器へ変更して強度を増したり、特徴的なエッジの部分に丸みを帯びさせたり、釉薬を変えてみたり……一見わからないような微細なアップデートを繰り返しながら進化してきました。それらの経験から導き出したノウハウをARASにも盛り込んだところは多分にあります。

カタチにしたところが完成ではなく、その後も使用しながら観察し、少しずつ改良を重ねてゆく。進化を止めないDNAが、ARASの思想にあります。今後もスクープに限らず、全てのシリーズを通して改良を続けていきたいと思っています。

※試作・テスト段階の画像

石川
ものづくりをする上で、常により良いものを目指す姿勢は当然のことです。同時に、初期に購入していただいたユーザーさの気持ち大事にしたい想いがあります。わたしたちの独りよがりの判断で商品を大幅に変えると全然違うじゃん」「もう私の好きなスクープはないの?」と、今までARASの器を使用してくださっていたユーザーさまをがっかりさせてしまうかもしれません。

 改良を重ねてより良い商品づくりを目指す一方で、ユーザーのみなさまの気持ちをないがしろにしてはいけない。「よかれ」と思って踏み込んだ改良が、良くも悪くもユーザーさまの違和感として残ってしまうことへの配慮は徹底すべきだと考えています。節度を持って、丁寧に改良を進めていく必要があります。

柳井
簡単にデザインを変えることは本望ではありません。孫の代まで使えるものづくりをしたいという想いから、人間のプリミティブな道具として食具に目を向け、器づくりを続けてきました根本にあるのは「モノを大事にする気持ち」です。新しいものが出たから、古いものは要らない。そうなってしまうと本末転倒です。

今回の新しいモデルは、今まで使ってくださっている方も継続してご使用いただけますし、むしろ、どちらのモデルも何一つ遜色なく共存できるものだと考えています。

ユーザーのみなさまへのメッセージ

石川
柳井さんが仰る通り、今までのスクープ皿も変わらずにお使いいただけます。わたし自身、家庭では新旧両方のスクープ皿を楽しんでいます。

日々の変化の中で、ARASの器もまた少しずつ成長しています。次に手に取った時、「ちょっと変わったかも」と、器たちの変化自体を楽しんでいただけるとうれしいです。

 

柳井
プロダクトが多くの人に届く中で、様々なフェーズにおける問題点が出てくることはこれからも起こるでしょう。今回journalでみなさまにお知らせできたことで、その時々で柔軟に変更していくことができるブランドであることがみなさまへ伝わればと思っています。

大切に愛用してくださっているユーザーのみなさまへ、嘘偽りなく伝えること。それはARASの在り方としてとても大事なことだと考えています。ARASの現状とこれからを見ていただけるとうれしいです。 

これからもARASは、成長し続けます。

既存のシリーズが改良されるのは、今回のスクープ皿がはじめて。わたしたちは、これからユーザーのみなさまから届いた声をもとに、みなさまの想いと共に少しずつ成長していきたいと思っています。お気付きの点、ご要望があればお気軽にお問合せください。

今後とも、ARASをよろしくお願いいたします。

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