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暮らしの中にARASを

暮らしの中にARASを

ARASのプロダクトデザイナーである上町達也さんが、ARASアンバサダーの幸美さんのご自宅をお伺いして、対談しました。その模様をお届けします。 事前に上町さんに幸美さんの印象を尋ねたところ、「Instagramの投稿では、料理とコーディネートはもちろんのこと、カメラにおける光の環境も、色味も、つくり込みも綺麗に施されていて、一つひとつのセレクトにクリエイティブに対する感度の高さを感じています。“どういう方なんだろう?”とずっと気になっていたので、今回お話しできることがとても楽しみです」と話してくれました。 料理と器 上町:幸美さんがお料理に目覚められたきっかけは何だったのでしょうか? 幸美様:実は、結婚するまで料理は何もできませんでした。カレーをつくることさえままならないほどだったのですが、夫が食べることが好きで、そこからいろいろとつくるようになりました。  上町:ご家族に食べてもらう喜びから、料理に目覚めたんですね。「料理をすること」と「道具を揃えること」は、嗜好性として少しニュアンスが異なる気がするのですが、器に対する興味関心は、いつ芽生えたのでしょう? 幸美様:三年前からです。近所にお気に入りの雑貨屋さんがあり、そこで作家さんがおつくりになった陶磁器や硝子の器に触れたことがきっかけです。  上町:幸美さんのご自宅の空間を見ていると、モノがお好きなことは伝わってきます。インテリアに関しても、もともとご興味が?  幸美様:そうですね。古物も好きですし。特に夫が好きで、いつも二人で買い物をしています。  暮らしの中のARAS 上町:これまで、ARASを利用していてよかったと思えるシーンについて聞かせてください。  幸美様:カラーバリエーションが豊富で、器の色味によって盛り付けを考えることが楽しく、他のカラーと合わせてもコーディネートがまとまりやすいですよね。ARASの器だけでなく、陶磁器や硝子の食器と並んでいても自然に馴染むところも魅力です。 あと、買ってきたものを盛り付けだけでも、器が料理を引き立ててくれますよね。深皿にお刺身の四点盛りを載せると、きゅっとまとまります。 上町:僕たちもチーム内で、「肩の力を抜いて使ってもらいたい」という話をしています。器に料理を盛り付ける時、後の洗い物のことなども頭によぎりますよね。割れ物だと余計に注意を払わなければいけません。だから、デザインが担保されていて、気軽にすっと手を伸ばせる器があったらいいなという想いでつくってきました。幸美さんが仰っていただいた言葉は、僕にとっても非常にうれしいポイントでした。  一枚一枚、表情が違うお皿 上町:ARASにはじめて触れた時の印象はいかがでしたか? 幸美様:とても不思議な感覚でした。手に触れた質感も、洗った時の水の弾き方も、お料理の匂いも全然移らなくて。それまでわたしの思っていた樹脂とはまた違った印象でした。  上町:一口に“樹脂”と言っても、実は一万種類以上あります。開発チームがその中から最適な素材を選んで器づくりをしています。ARASならではの独特の質感や機能性は、素材のセレクトから生まれています。  幸美様:一枚一枚、模様が違いますよね。 上町:ランダムに現れる模様は、制作のプロセスで素材に自由に暴れてもらっています。ただ、単純に金型に素材を流せば自然とこれらの模様が生まれるわけではなく、素材の量に合わせて、初動の圧力、数秒後の圧力……と、複数のステップにわけて微調整をしてつくっています。樹脂製品は、生産レーンで機械が無機質につくっているイメージがありますが、僕たちの場合は“人”が細やかな調整をしなければできないつくり方をしています。  幸美様:一枚一枚、スペシャルな器ですね。 上町:樹脂製品で一期一会の器を、どのようにつくるか。それが僕たちデザイナーのミッションでした。たとえば、カトラリーなどでも、柄の部分がマーブル調になっています。一般的な方法では、加飾して塗装したり、シートを貼ったりして、模様をしつらえているのですが、そうするとリサイクル性が悪くなります。ですので、何の加飾も、塗装もせず、どれだけ質感を高めることができるかにチャレンジしました。ですので、模様はそれぞれ表情が異なりますが、リサイクル材としても使用できます。  「均質につくることが正義」という樹脂製品の価値観を大きく変えたアプローチでした。 ヒートコレクション 幸美様:カタチも本当に素敵で、今回のヒートコレクションも、横のくびれのラインがとても美しいですよね。お写真を拝見した時、シンプルに「あ、六角形だ」と思っていたのですが、届いて実際に触れてみると綺麗なくびれのラインがあってときめきました。  上町:そこに注目してくださり、とてもうれしいです。お料理を冷蔵庫の中で一度休ませるなど、保存する時のシーンを想像して設計しました。フラットだと、器を底から持ち上げないといけません。そうすると手に負担がかかるので、このゆるやかなラインが手にフィットしてやさしく支えてくれます。 幸美様:見た目だけでなく、手に馴染みやすいことも考えられているんですね。お色味も素敵で、「全部ほしい」と思っちゃうくらい好きなカラーです。色合わせが楽しそうなのでレッドブラウンに惹かれました。 今回のヒートコレクションでは、秋の食材で和食の盛り付けをしてみようと思っています。たとえば、ちらし寿司は盛り付けに悩んだりするのですが、この器だと角があるので綺麗に盛り付けることができそうだな、とか。小サイズだとお茶碗一杯分くらいごはんが入るので、いくつか用意して食卓に並べてもかわいいですよね。あと、韓国料理とも相性が良い気がして。そんな妄想を膨らませています。 上町:それはぜひとも見てみたいですし、食べてみたいです(笑) 逆さ使いなどはイメージされていますか?ヒートコレクションでは、上下反転させてフードカバーのようなスタイルでも使えて、お料理のカタチを崩したくないシーンや、外気に触れさせたくないケーキの保存などにも最適です。 ...

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ARASのプロダクトデザイナーである上町達也さんが、ARASアンバサダーの幸美さんのご自宅をお伺いして、対談しました。その模様をお届けします。 事前に上町さんに幸美さんの印象を尋ねたところ、「Instagramの投稿では、料理とコーディネートはもちろんのこと、カメラにおける光の環境も、色味も、つくり込みも綺麗に施されていて、一つひとつのセレクトにクリエイティブに対する感度の高さを感じています。“どういう方なんだろう?”とずっと気になっていたので、今回お話しできることがとても楽しみです」と話してくれました。 料理と器 上町:幸美さんがお料理に目覚められたきっかけは何だったのでしょうか? 幸美様:実は、結婚するまで料理は何もできませんでした。カレーをつくることさえままならないほどだったのですが、夫が食べることが好きで、そこからいろいろとつくるようになりました。  上町:ご家族に食べてもらう喜びから、料理に目覚めたんですね。「料理をすること」と「道具を揃えること」は、嗜好性として少しニュアンスが異なる気がするのですが、器に対する興味関心は、いつ芽生えたのでしょう? 幸美様:三年前からです。近所にお気に入りの雑貨屋さんがあり、そこで作家さんがおつくりになった陶磁器や硝子の器に触れたことがきっかけです。  上町:幸美さんのご自宅の空間を見ていると、モノがお好きなことは伝わってきます。インテリアに関しても、もともとご興味が?  幸美様:そうですね。古物も好きですし。特に夫が好きで、いつも二人で買い物をしています。  暮らしの中のARAS 上町:これまで、ARASを利用していてよかったと思えるシーンについて聞かせてください。  幸美様:カラーバリエーションが豊富で、器の色味によって盛り付けを考えることが楽しく、他のカラーと合わせてもコーディネートがまとまりやすいですよね。ARASの器だけでなく、陶磁器や硝子の食器と並んでいても自然に馴染むところも魅力です。 あと、買ってきたものを盛り付けだけでも、器が料理を引き立ててくれますよね。深皿にお刺身の四点盛りを載せると、きゅっとまとまります。 上町:僕たちもチーム内で、「肩の力を抜いて使ってもらいたい」という話をしています。器に料理を盛り付ける時、後の洗い物のことなども頭によぎりますよね。割れ物だと余計に注意を払わなければいけません。だから、デザインが担保されていて、気軽にすっと手を伸ばせる器があったらいいなという想いでつくってきました。幸美さんが仰っていただいた言葉は、僕にとっても非常にうれしいポイントでした。  一枚一枚、表情が違うお皿 上町:ARASにはじめて触れた時の印象はいかがでしたか? 幸美様:とても不思議な感覚でした。手に触れた質感も、洗った時の水の弾き方も、お料理の匂いも全然移らなくて。それまでわたしの思っていた樹脂とはまた違った印象でした。  上町:一口に“樹脂”と言っても、実は一万種類以上あります。開発チームがその中から最適な素材を選んで器づくりをしています。ARASならではの独特の質感や機能性は、素材のセレクトから生まれています。  幸美様:一枚一枚、模様が違いますよね。 上町:ランダムに現れる模様は、制作のプロセスで素材に自由に暴れてもらっています。ただ、単純に金型に素材を流せば自然とこれらの模様が生まれるわけではなく、素材の量に合わせて、初動の圧力、数秒後の圧力……と、複数のステップにわけて微調整をしてつくっています。樹脂製品は、生産レーンで機械が無機質につくっているイメージがありますが、僕たちの場合は“人”が細やかな調整をしなければできないつくり方をしています。  幸美様:一枚一枚、スペシャルな器ですね。 上町:樹脂製品で一期一会の器を、どのようにつくるか。それが僕たちデザイナーのミッションでした。たとえば、カトラリーなどでも、柄の部分がマーブル調になっています。一般的な方法では、加飾して塗装したり、シートを貼ったりして、模様をしつらえているのですが、そうするとリサイクル性が悪くなります。ですので、何の加飾も、塗装もせず、どれだけ質感を高めることができるかにチャレンジしました。ですので、模様はそれぞれ表情が異なりますが、リサイクル材としても使用できます。  「均質につくることが正義」という樹脂製品の価値観を大きく変えたアプローチでした。 ヒートコレクション 幸美様:カタチも本当に素敵で、今回のヒートコレクションも、横のくびれのラインがとても美しいですよね。お写真を拝見した時、シンプルに「あ、六角形だ」と思っていたのですが、届いて実際に触れてみると綺麗なくびれのラインがあってときめきました。  上町:そこに注目してくださり、とてもうれしいです。お料理を冷蔵庫の中で一度休ませるなど、保存する時のシーンを想像して設計しました。フラットだと、器を底から持ち上げないといけません。そうすると手に負担がかかるので、このゆるやかなラインが手にフィットしてやさしく支えてくれます。 幸美様:見た目だけでなく、手に馴染みやすいことも考えられているんですね。お色味も素敵で、「全部ほしい」と思っちゃうくらい好きなカラーです。色合わせが楽しそうなのでレッドブラウンに惹かれました。 今回のヒートコレクションでは、秋の食材で和食の盛り付けをしてみようと思っています。たとえば、ちらし寿司は盛り付けに悩んだりするのですが、この器だと角があるので綺麗に盛り付けることができそうだな、とか。小サイズだとお茶碗一杯分くらいごはんが入るので、いくつか用意して食卓に並べてもかわいいですよね。あと、韓国料理とも相性が良い気がして。そんな妄想を膨らませています。 上町:それはぜひとも見てみたいですし、食べてみたいです(笑) 逆さ使いなどはイメージされていますか?ヒートコレクションでは、上下反転させてフードカバーのようなスタイルでも使えて、お料理のカタチを崩したくないシーンや、外気に触れさせたくないケーキの保存などにも最適です。 ...

ARAS初の電子レンジ対応の器『ヒートコレクション』~温める。保存する。盛り付ける。~

ARAS初の電子レンジ対応の器『ヒートコレクション』~温める。保存する。盛り付ける。~

9月8日、ARAS初の電子レンジ対応の器『ヒートコレクション』が発売されます。 一年以上に渡る開発を経て、今までご要望の多かった電子レンジ対応のプロダクトが完成しました。キャッチフレーズは「温める。保存する。盛り付ける。」、忙しい日常の中でも日々の食卓を豊かに彩る器です。つくった料理を電子レンジで温め直したり、保存容器として冷蔵庫に保存し、そのまま明日の食卓に並べることも。「深鉢ロッカク」「平皿ロッカク」それぞれサイズは大中小の3サイズ展開、カラーは、ブラック、グレー、カーキ、レッドブラウンの全4色展開です。 発売を記念して、ARAS開発者の石川工業株式会社専務取締役の石川勤さんと、プロダクトデザインを手掛けるクリエイティブチームsecca代表の上町達也さんにインタビューしました。 石川勤/開発者(石川樹脂工業)上町達也/プロダクトデザイナー(secca)嶋津/インタビュアー ヒートコレクションが生まれたきっかけ  ──ヒートコレクションの生まれた経緯をお聞かせください。 上町これまで3年半、ARASの開発を続けてきた中で、お客さまから「電子レンジの利用はできますか?」という問い合わせやご要望がたくさんありました。器である以上は、陶磁器や硝子などと同等の体験ができて当然のこと。ただ、ARASとしては、ユーザーのみなさまに素材の良さを楽しんでほしいという想いがありました。それが結果として、普段使っている器でできていたことができなくなることは僕たちの本意ではない。当初から、そのジレンマを抱えなら器づくりに取り組んでいました。ただ、見方を変えれば、そこがちゃんと担保できさえすれば、素材の良さとも本当の意味で向き合ってもらえるということでもあります。その中で、「レンジ対応は本当にできるのか」を議論し続けてきました。 石川一方で、ベーシックコレクション(既存のシリーズ)の時に妥協して素材選びをしていたわけではありません。ARASは「食体験を支え、豊かにする」を指針にしてきたからこそ、こだわりを持って素材を選定してきました。 ARASの特色でもあるカラーバリエーションの豊富さはもちろんのこと、汚れの落ちやすさ、食洗器の対応、漂白剤への耐久……など、機能面でクリアしなければならないポイントはたくさんありました。一口に“樹脂”と言っても様々な種類があり、それらの機能を実現するための技術を要します。 石川「電子レンジに使えて当然」というご意見をいただく中で、初期のわたしたちは素材の色の豊かさや汚れの落ちやすさを優先するというかなりエッジの効いた提案をしていました。ベーシックコレクションの素材で電子レンジ対応のプロダクトをつくることができれば最もなめらかで、美しい解決策だったと思います。しかし、様々な検証の結果、わたしたちたちの中では「難しい」という回答に至りました。 機能面だけで言えば、つくろうと思えばつくることができます。現にそのようなプロダクトは世の中に流通しています。ただ、耐久性や品質、何より「永く使えて、食体験を豊かにする」という意味で、わたしたちの基準には至りませんでした。要は、自分たちが納得できなかったんです。安心・安全な素材の選定、豊かな色彩、形状へのこだわり、どこにも妥協なく向き合い続ける──相変わらずARASらしく遠回りしてつくったように思います。 素材・形状から考え直さなければならない。まさに1からの再スタートになったのです。  どんな時に、電子レンジを使うのだろう? 新たな問いとして「電子レンジを使うということは、どういうことなのか?」から考えはじめたARASチーム。ここからコンセプトが生まれてゆきます。 上町まず、電子レンジを使いたくなるシーンから考えはじめました。 たとえば、忙しい世の中なので、家族が同じ時間に食卓を囲むことができない時が多々あります。お父さんだけ帰りが遅い、お母さんだけ帰りが遅い、塾帰りのお子さんのお夜食に…など、同じ屋根の下で暮らしている家族であっても、食事の時間がずれることは少なくありません。 「心を込めてつくった料理を、おいしい状態で食べてほしい」 それが、つくり手側の気持ちにあるものです。ARASをご愛用してくださる方は、おおむねご家庭で手料理を楽しんでいる機会が多いのではないでしょうか。「おいしく食べたい」という食べる側の気持ちもありますが、僕たちとしては食べてもらう側の気持ちも大切にしたい。単に“電子レンジ対応”という機能面だけでなく、そこにいる人の心の欲求を満たす器でありたい。時間がずれた時でも、心を込めた料理を温め直して、おいしく食べてもらうこと。そこが、はじめに僕たちが想定した具体的なシーンでした。 明日へつなぐ、こころをつなぐ 料理を翌日や翌々日のためにつくり置きすること、調理の過程で料理を冷蔵庫の中で休ませておくこと、それらもすべて「おいしく食べてもらうため」、明日につなぐためにつくっている。 上町これらのシーンを想定した上で、「保存ができて、温めることができる」という課題に対してシンプルに考えるとタッパーウェアのような容器が求められます。ただ、それだとどうしても無機質になってしまう。そのまま食卓に並べると不格好ですし、別の器に盛り付け直すと洗い物が増えることになります。食卓の彩りや、つくり手の負担を考えると、まだそこに相応しい選択肢がないことに気付きました。 器自体が、保存容器にもなり、温め直せるものであり、既存の器と並べても遜色なく、豊かな食体験を支えるもの。チームで議論を重ねるうちに、どういうものをつくろうとしているのかがだんだんクリアになってきました。  素材  ARASでは新商品のコンセプトができると、少なくとも半年以内に発売まで進めることが通例だと言います。今回のヒートコレクションでは、チームのみなさんは一年以上かけて開発に取り組んできました。「電子レンジ対応であり、色も豊かに表現できる器。まず、そこが大きな壁でした。」と石川さんは話します。 石川技術者として、そもそも「電子レンジとは何であるか」というところから考えはじめました。マイクロウェーブの構造を知り、料理によって温まりやすさが異なることなど“電子レンジ”が起こす現象を一つひとつ理解してゆきました。 最も時間がかかったポイントは、素材と形状です。素材が変わると、汚れの落ちやすさも変わります。特にレンジで温める料理は、調理の段階で加熱処理が施されているケースが多く、汚れが残りやすい傾向にあります。 「電子レンジは使えるけれど、汚れが付いてすぐに使えなくなっちゃった」では、本末転倒になってしまいます。そこは丁寧に検証していかなければいけません。表面の加工も含めて、技術的にいかに詰めてゆくのかに相当の時間をかけました。 ARASらしさのある「食体験の豊かさにつながるアプローチとは何か」を追求した結果、ようやくコンセプトに相応しい素材の選定と、それを生かしたデザインが完成しました。 デザイン 上町六角形であること、サイドがくびれていること、上蓋があること。それらが、今回のデザインにおける具体的なソリューションとなっています。...

ARAS初の電子レンジ対応の器『ヒートコレクション』~温める。保存する。盛り付ける。~

9月8日、ARAS初の電子レンジ対応の器『ヒートコレクション』が発売されます。 一年以上に渡る開発を経て、今までご要望の多かった電子レンジ対応のプロダクトが完成しました。キャッチフレーズは「温める。保存する。盛り付ける。」、忙しい日常の中でも日々の食卓を豊かに彩る器です。つくった料理を電子レンジで温め直したり、保存容器として冷蔵庫に保存し、そのまま明日の食卓に並べることも。「深鉢ロッカク」「平皿ロッカク」それぞれサイズは大中小の3サイズ展開、カラーは、ブラック、グレー、カーキ、レッドブラウンの全4色展開です。 発売を記念して、ARAS開発者の石川工業株式会社専務取締役の石川勤さんと、プロダクトデザインを手掛けるクリエイティブチームsecca代表の上町達也さんにインタビューしました。 石川勤/開発者(石川樹脂工業)上町達也/プロダクトデザイナー(secca)嶋津/インタビュアー ヒートコレクションが生まれたきっかけ  ──ヒートコレクションの生まれた経緯をお聞かせください。 上町これまで3年半、ARASの開発を続けてきた中で、お客さまから「電子レンジの利用はできますか?」という問い合わせやご要望がたくさんありました。器である以上は、陶磁器や硝子などと同等の体験ができて当然のこと。ただ、ARASとしては、ユーザーのみなさまに素材の良さを楽しんでほしいという想いがありました。それが結果として、普段使っている器でできていたことができなくなることは僕たちの本意ではない。当初から、そのジレンマを抱えなら器づくりに取り組んでいました。ただ、見方を変えれば、そこがちゃんと担保できさえすれば、素材の良さとも本当の意味で向き合ってもらえるということでもあります。その中で、「レンジ対応は本当にできるのか」を議論し続けてきました。 石川一方で、ベーシックコレクション(既存のシリーズ)の時に妥協して素材選びをしていたわけではありません。ARASは「食体験を支え、豊かにする」を指針にしてきたからこそ、こだわりを持って素材を選定してきました。 ARASの特色でもあるカラーバリエーションの豊富さはもちろんのこと、汚れの落ちやすさ、食洗器の対応、漂白剤への耐久……など、機能面でクリアしなければならないポイントはたくさんありました。一口に“樹脂”と言っても様々な種類があり、それらの機能を実現するための技術を要します。 石川「電子レンジに使えて当然」というご意見をいただく中で、初期のわたしたちは素材の色の豊かさや汚れの落ちやすさを優先するというかなりエッジの効いた提案をしていました。ベーシックコレクションの素材で電子レンジ対応のプロダクトをつくることができれば最もなめらかで、美しい解決策だったと思います。しかし、様々な検証の結果、わたしたちたちの中では「難しい」という回答に至りました。 機能面だけで言えば、つくろうと思えばつくることができます。現にそのようなプロダクトは世の中に流通しています。ただ、耐久性や品質、何より「永く使えて、食体験を豊かにする」という意味で、わたしたちの基準には至りませんでした。要は、自分たちが納得できなかったんです。安心・安全な素材の選定、豊かな色彩、形状へのこだわり、どこにも妥協なく向き合い続ける──相変わらずARASらしく遠回りしてつくったように思います。 素材・形状から考え直さなければならない。まさに1からの再スタートになったのです。  どんな時に、電子レンジを使うのだろう? 新たな問いとして「電子レンジを使うということは、どういうことなのか?」から考えはじめたARASチーム。ここからコンセプトが生まれてゆきます。 上町まず、電子レンジを使いたくなるシーンから考えはじめました。 たとえば、忙しい世の中なので、家族が同じ時間に食卓を囲むことができない時が多々あります。お父さんだけ帰りが遅い、お母さんだけ帰りが遅い、塾帰りのお子さんのお夜食に…など、同じ屋根の下で暮らしている家族であっても、食事の時間がずれることは少なくありません。 「心を込めてつくった料理を、おいしい状態で食べてほしい」 それが、つくり手側の気持ちにあるものです。ARASをご愛用してくださる方は、おおむねご家庭で手料理を楽しんでいる機会が多いのではないでしょうか。「おいしく食べたい」という食べる側の気持ちもありますが、僕たちとしては食べてもらう側の気持ちも大切にしたい。単に“電子レンジ対応”という機能面だけでなく、そこにいる人の心の欲求を満たす器でありたい。時間がずれた時でも、心を込めた料理を温め直して、おいしく食べてもらうこと。そこが、はじめに僕たちが想定した具体的なシーンでした。 明日へつなぐ、こころをつなぐ 料理を翌日や翌々日のためにつくり置きすること、調理の過程で料理を冷蔵庫の中で休ませておくこと、それらもすべて「おいしく食べてもらうため」、明日につなぐためにつくっている。 上町これらのシーンを想定した上で、「保存ができて、温めることができる」という課題に対してシンプルに考えるとタッパーウェアのような容器が求められます。ただ、それだとどうしても無機質になってしまう。そのまま食卓に並べると不格好ですし、別の器に盛り付け直すと洗い物が増えることになります。食卓の彩りや、つくり手の負担を考えると、まだそこに相応しい選択肢がないことに気付きました。 器自体が、保存容器にもなり、温め直せるものであり、既存の器と並べても遜色なく、豊かな食体験を支えるもの。チームで議論を重ねるうちに、どういうものをつくろうとしているのかがだんだんクリアになってきました。  素材  ARASでは新商品のコンセプトができると、少なくとも半年以内に発売まで進めることが通例だと言います。今回のヒートコレクションでは、チームのみなさんは一年以上かけて開発に取り組んできました。「電子レンジ対応であり、色も豊かに表現できる器。まず、そこが大きな壁でした。」と石川さんは話します。 石川技術者として、そもそも「電子レンジとは何であるか」というところから考えはじめました。マイクロウェーブの構造を知り、料理によって温まりやすさが異なることなど“電子レンジ”が起こす現象を一つひとつ理解してゆきました。 最も時間がかかったポイントは、素材と形状です。素材が変わると、汚れの落ちやすさも変わります。特にレンジで温める料理は、調理の段階で加熱処理が施されているケースが多く、汚れが残りやすい傾向にあります。 「電子レンジは使えるけれど、汚れが付いてすぐに使えなくなっちゃった」では、本末転倒になってしまいます。そこは丁寧に検証していかなければいけません。表面の加工も含めて、技術的にいかに詰めてゆくのかに相当の時間をかけました。 ARASらしさのある「食体験の豊かさにつながるアプローチとは何か」を追求した結果、ようやくコンセプトに相応しい素材の選定と、それを生かしたデザインが完成しました。 デザイン 上町六角形であること、サイドがくびれていること、上蓋があること。それらが、今回のデザインにおける具体的なソリューションとなっています。...

自然の色彩を切り取り、食卓に“選ぶ楽しみ”を【後編】 ~サステナブルコレクション「杉皮」「海水」から全6色の新ラインナップが登場~

自然の色彩を切り取り、食卓に“選ぶ楽しみ”を【後編】 ~サステナブルコレクション「杉皮」「海水...

ARASのサステナブルコレクションから「杉皮」と「海水」に新しいカラーバリエーションが登場した。前回に引き続き、新商品ができるまでの工程を辿りながら、ARASチームの想いを伺った。前編では「つくる視点」、後編では「届ける視点」を紹介する。   水上絵梨香/ブランドマネージャー(石川樹脂工業)石向洋祐/ブランディングディレクター/アートディレクター(POOL inc.)矢田朋未/グラフィックデザイナー 嶋津/インタビュアー 緻密な計算と妥協なき検証 プロトタイプが出来上がる度に、それを自然光、白熱灯、間接照明など、さまざまな照度の下に置いてきめ細かにチェックする。ECサイトや売り場の照明の下で見た時と、購入後に家のリビングで見た時では印象が変わるからだ。明かり次第では、ほとんど違いを識別できない色味もある。プロダクトに対して、ARASチームは一切の妥協がない。 “新しさ”を届けるコミュニケーション ARASは扱う素材や商品開発に、前例のないアプローチで進めている。“新しさ”は、それが過多になるとユーザーとの間に距離を生んでしまうリスクがある。ARASの世界観をビジュアル化し、世の中にいかに届けるかを考える二人──ブランディングディレクターでありアートディレクターの石向さんとグラフィックデザイナーの矢田さんはユーザーとのコミュニケーション(届け方)の観点から色味のバランスを考える。 石向:海水シリーズのコーラルピンクは、硝子では再現できない素材感と独特の雰囲気を兼ね備えた、今までに見たことがない器となりました。ただ、既視感がないだけに、見せ方には慎重にならなくてはいけません。お客さまが広告などで商品を目にした時は、その印象的な佇まいに目を惹かれるのですが、どうしても扱い方のイメージが湧きづらくなります。 たとえば、海岸沿いに器を置いてハワイアンな印象付けをすることは容易ですが、そうなるとパンケーキを盛り付ける以外の選択肢が思い浮かばなくなってしまいます。温野菜や刺身を盛り付けた和食との組み合わせなど、意外性のある提案をして「こういう使い方もあるんだ」と思ってもらえる工夫がどれだけできるか。 料理を楽しみたい人のためのカラーバリエーションだからこそ、楽しみ方の方向性を先に指し示すことも、僕たちの役割だと思っています。インパクトのある器でありながら、それが日常の延長線上にあることをビジュアルで提示する。お客さまが「これなら使えるかも」と思ってもらえるようなコミュニケーションを含めて、色味を考えています。   矢田:従来の「杉皮」は渋く、シックな色味が特徴で人気がありますが、今回の新色では明るい木の色を模索しました。陽の差し込む杉林の表情には、やわらかいイメージがあります。従来のプロダクトとは雰囲気も変わり、器を手にしてくれる人も、置かれる食卓も変わるんじゃないかとわくわくしました。実際、わたしもこの色味がほしいです。杉皮だけでは広がらなかった食体験の幅を、今回の新たなカラーバリエーションによってサポートできるのではないかと思っています。 器を考えながら、同時に器が使われる風景やお客さまへの伝わり方も想像する。その多角的な視点が、プロダクトの精度を高めている。数々の検証の結果、全6色(新色は4種)のカラーが誕生した。一つひとつの色味の魅力はもちろんのこと、シリーズごとのバランスやその関係性にもストーリーを感じる内容となっている。 杉皮シリーズ従来の「ブラウン」植物の生命力を感じる、深く暗い森の情景を切り出した「ブラック」杉の木が並び立つ、杉林の情景を切り出した「ライトブラウン」 海水シリーズ従来の「ミネラルホワイト」南の澄んだ鮮やかな蒼い海の情景を切り出した「マリンブルー」夕陽によってピンク色に染まった海の情景を切り出した「コーラルピンク」   問いかける器 「サステナブルって何?」  器をデザインするだけではなく、人のこころを、そして、社会の在り方をデザインする。プロジェクトマネージャーの水上さんは「サステナブルコレクションは未来の器への一つの提案です」と話した。ARASの器を手にした人が、サステナブルについて想いを巡らせたり、「これからの器」について考えるきっかけになる。器自体が、コミュニケーションとして機能する。 水上:単にカラーバリエーションを出すだけではなく、食体験を拡張すること。利益を追求することも重要ですが、社会に寄与するような価値観を提示したい想いがあります。サステナブルコレクションは「杉皮」「海水」共に、産業廃棄物となった自然の素材を再利用して、食体験を豊かにする素材として価値変換できないかという問いからはじまりました。地球に存在する素材と向き合っていくという文脈があります。 商材を増やすことを目的に置くのではなく、ARASの価値観を伝えることが重要です。根幹にあるサステナブルコレクションのストーリーを伝えながら、器を選ぶ楽しさを味わってもらい、それが結果的に食体験を豊かにする。今回の新色展開が、いつもご愛用してくださるみなさんはもちろんのこと、まだ手にしたことのないお客さまへ届くきっかけになればと思っています。 このようにして、食卓に豊かな彩りと「選ぶ楽しみ」を届ける新たなプロダクトが生まれた。自然の情景を落とし込んだその美しいビジュアルにこころ踊り、そこに込められたサステナブルのメッセージに想いを巡らせる。ARASがデザインする、器を通したコミュニケーション。まさに、それは“問いかける器”。 ARASチームは、食卓に生まれる“わくわく”を創造する。   インタビュー/編集:ダイアログ・デザイナー 嶋津

自然の色彩を切り取り、食卓に“選ぶ楽しみ”を【後編】 ~サステナブルコレクション「杉皮」「海水...

ARASのサステナブルコレクションから「杉皮」と「海水」に新しいカラーバリエーションが登場した。前回に引き続き、新商品ができるまでの工程を辿りながら、ARASチームの想いを伺った。前編では「つくる視点」、後編では「届ける視点」を紹介する。   水上絵梨香/ブランドマネージャー(石川樹脂工業)石向洋祐/ブランディングディレクター/アートディレクター(POOL inc.)矢田朋未/グラフィックデザイナー 嶋津/インタビュアー 緻密な計算と妥協なき検証 プロトタイプが出来上がる度に、それを自然光、白熱灯、間接照明など、さまざまな照度の下に置いてきめ細かにチェックする。ECサイトや売り場の照明の下で見た時と、購入後に家のリビングで見た時では印象が変わるからだ。明かり次第では、ほとんど違いを識別できない色味もある。プロダクトに対して、ARASチームは一切の妥協がない。 “新しさ”を届けるコミュニケーション ARASは扱う素材や商品開発に、前例のないアプローチで進めている。“新しさ”は、それが過多になるとユーザーとの間に距離を生んでしまうリスクがある。ARASの世界観をビジュアル化し、世の中にいかに届けるかを考える二人──ブランディングディレクターでありアートディレクターの石向さんとグラフィックデザイナーの矢田さんはユーザーとのコミュニケーション(届け方)の観点から色味のバランスを考える。 石向:海水シリーズのコーラルピンクは、硝子では再現できない素材感と独特の雰囲気を兼ね備えた、今までに見たことがない器となりました。ただ、既視感がないだけに、見せ方には慎重にならなくてはいけません。お客さまが広告などで商品を目にした時は、その印象的な佇まいに目を惹かれるのですが、どうしても扱い方のイメージが湧きづらくなります。 たとえば、海岸沿いに器を置いてハワイアンな印象付けをすることは容易ですが、そうなるとパンケーキを盛り付ける以外の選択肢が思い浮かばなくなってしまいます。温野菜や刺身を盛り付けた和食との組み合わせなど、意外性のある提案をして「こういう使い方もあるんだ」と思ってもらえる工夫がどれだけできるか。 料理を楽しみたい人のためのカラーバリエーションだからこそ、楽しみ方の方向性を先に指し示すことも、僕たちの役割だと思っています。インパクトのある器でありながら、それが日常の延長線上にあることをビジュアルで提示する。お客さまが「これなら使えるかも」と思ってもらえるようなコミュニケーションを含めて、色味を考えています。   矢田:従来の「杉皮」は渋く、シックな色味が特徴で人気がありますが、今回の新色では明るい木の色を模索しました。陽の差し込む杉林の表情には、やわらかいイメージがあります。従来のプロダクトとは雰囲気も変わり、器を手にしてくれる人も、置かれる食卓も変わるんじゃないかとわくわくしました。実際、わたしもこの色味がほしいです。杉皮だけでは広がらなかった食体験の幅を、今回の新たなカラーバリエーションによってサポートできるのではないかと思っています。 器を考えながら、同時に器が使われる風景やお客さまへの伝わり方も想像する。その多角的な視点が、プロダクトの精度を高めている。数々の検証の結果、全6色(新色は4種)のカラーが誕生した。一つひとつの色味の魅力はもちろんのこと、シリーズごとのバランスやその関係性にもストーリーを感じる内容となっている。 杉皮シリーズ従来の「ブラウン」植物の生命力を感じる、深く暗い森の情景を切り出した「ブラック」杉の木が並び立つ、杉林の情景を切り出した「ライトブラウン」 海水シリーズ従来の「ミネラルホワイト」南の澄んだ鮮やかな蒼い海の情景を切り出した「マリンブルー」夕陽によってピンク色に染まった海の情景を切り出した「コーラルピンク」   問いかける器 「サステナブルって何?」  器をデザインするだけではなく、人のこころを、そして、社会の在り方をデザインする。プロジェクトマネージャーの水上さんは「サステナブルコレクションは未来の器への一つの提案です」と話した。ARASの器を手にした人が、サステナブルについて想いを巡らせたり、「これからの器」について考えるきっかけになる。器自体が、コミュニケーションとして機能する。 水上:単にカラーバリエーションを出すだけではなく、食体験を拡張すること。利益を追求することも重要ですが、社会に寄与するような価値観を提示したい想いがあります。サステナブルコレクションは「杉皮」「海水」共に、産業廃棄物となった自然の素材を再利用して、食体験を豊かにする素材として価値変換できないかという問いからはじまりました。地球に存在する素材と向き合っていくという文脈があります。 商材を増やすことを目的に置くのではなく、ARASの価値観を伝えることが重要です。根幹にあるサステナブルコレクションのストーリーを伝えながら、器を選ぶ楽しさを味わってもらい、それが結果的に食体験を豊かにする。今回の新色展開が、いつもご愛用してくださるみなさんはもちろんのこと、まだ手にしたことのないお客さまへ届くきっかけになればと思っています。 このようにして、食卓に豊かな彩りと「選ぶ楽しみ」を届ける新たなプロダクトが生まれた。自然の情景を落とし込んだその美しいビジュアルにこころ踊り、そこに込められたサステナブルのメッセージに想いを巡らせる。ARASがデザインする、器を通したコミュニケーション。まさに、それは“問いかける器”。 ARASチームは、食卓に生まれる“わくわく”を創造する。   インタビュー/編集:ダイアログ・デザイナー 嶋津

自然の色彩を切り取り、食卓に“選ぶ楽しみ”を【前編】 ~サステナブルコレクション「杉皮」「海水」から全6色の新ラインナップが登場~

自然の色彩を切り取り、食卓に“選ぶ楽しみ”を【前編】 ~サステナブルコレクション「杉皮」「海水...

ARASのサステナブルコレクションから「杉皮」と「海水」に新しいカラーバリエーションが登場した。テーマは「食の情景の変化を楽しむ」。サステナブルコレクションは、食体験の進化と、環境と共生するものづくりの進化を目指し、これからの時代の豊かさをカタチにするプロダクトだ。新色の杉皮では木の風合いとぬくもりが、海水ではミネラル由来の質感と重厚感が、それぞれに有機的な表情を生み出し、料理を引き立てながら格調高い食空間を演出する 今回のjournalでは、「つくる視点」と「届ける視点」の前後編で、新商品ができるまでの工程を辿りつつ、ARASチームの想いを伺った。  石川勤/開発者(石川樹脂工業)上町達也/プロダクトデザイナー(secca)柳井友一/プロダクトデザイナー(secca) 嶋津/インタビュアー 新色展開への想い 「今日はどのお皿にしよう?」「わたしは赤にしようかな」「僕は青にしようかな」、そんな会話が一つでも生まれたら、これほど楽しいことはない──開発者の石川さんは頬をゆるめてそう話し、「お客さまに器を選ぶ楽しさを届けたい」と続けた。 石川:サステナブルコレクションは、石川樹脂工業だけでなく食器ブランドとしても前例のない試み*でしたので、発売当初はユーザーのみなさまへ受け入れていただけるか不安でいっぱいでした。いざ商品がお客さまのお手元に届くと、ARASのサステナブルの想いも含め、みなさまにあたたかく迎え入れていただけたことを実感し、胸をなでおろしました。そして、今回の新色展開へ舵を取ることができました。 カラーバリエーションが増えることで、テーブルコーディネートの幅も広がります。器を購入する時だけでなく、料理のシーンでも「どの皿が合うだろうか」と考えてもらえる。その「食器を選ぶ楽しさ」が、食体験の豊かさに繋がってゆく。もちろん、闇雲にバリエーションを増やせばいいというわけではありません。お客さまが混乱しないように配慮しつつ、食卓の幅が広がるアイテムになればと思っています。 *(注釈)「杉皮」は素材の半分を杉の皮、「海水」は海洋性ミネラルを50%以上含む素材を使用。いずれも天然由来の原料のため、製品化の際に素材による揺らぎが生まれ、一点一点の表情がすべて異なるプロダクトとなっている。 地球の情景を切り出す 新しいカラーバリエーションのテーマは「地球の情景を切り出す」。場所によってさまざまに、また時間によっても移ろう地球の豊かな表情。それらの情景を切り取って、器として食卓に並べるとすれば…イメージしてみてください。あなたはどんな地球の情景が好きですか?プロダクトデザイナーの上町さんと柳井さんが、器に落とし込む自然の色彩について解説してくれた。 「海って何色?」 上町: 一口に“海の色”と言っても、一人ひとりが思い浮かべる色彩は一つではありません。曇り空の日本海、光を蓄えたモルディブの海、環礁のある遠浅のエメラルドグリーン、深海のグランブルー、沈む夕陽に乱反射する海面…それは、生まれ育った環境や今までの経験によって異なります。まずはチーム内でイメージをしながら、色味の方向性を決めることが重要です。 柳井: 後から「見落としていた」ということがないように、最初にマトリックス上ですべての色彩パターンを洗い出し、メンバーで議論して、その中から最高の一つを見つけてゆく。このアプローチは、これまでにARASチームで培ってきた手法です。 色見表で森林や海の情景となるさまざまな色をピックアップして、「ミルクコーヒーの色に近いね」「これは瀬戸内っぽい」「孔雀釉のような色味だと料理と合うかも」とイメージをことばにして共有する。グラフィックの中で色を表現しても、モノとして形にしてみなければ実際の印象はわからない。プロトタイプをつくり、手に触れて見比べ、意見交換をして、次の試作へと反映する。そのように何度も検証を重ね、全員で「正解の色」を探求してゆく。 「おいしい色ってどんな色?」 上町:“違和感のない色”をつくりたいと思っています。基本的に食材は自然物なので、人工的な印象のある器に盛りつけると、料理と器が不和を起こしてしまいます。たとえば、器の彩度が高くなり過ぎると、ケミカルな印象を与えます。中には瑠璃色のように受け入れられやすい色味もありますが、基本的には山や海など自然の中にある色彩に近づくことができた方が違和感を取り除きやすい。 柳井:自然を見て、「汚い」と思う人はほとんどいません。それは、モノに対して抱く印象でも同じことが言えます。少しでも違和感を覚えれば、その原因はどこにあるのかを徹底的にリサーチする。その中で、メンバーたちの足並みが揃っていく感覚がおもしろいですね。 サステナブルコレクションのシリーズが登場してから、より自然との調和を意識するようになりました。僕たちデザイナーが、意図的に「絵を描く」というより、素材の持ち味を尊重し、最大限に活かすことを心がけています。 「杉皮」ではブラック、ブラウンといった森林の情景を、「海水」ではブルー、レッドといった海の情景を。どちらも時間経過によって移ろう表情に焦点を当て、色彩の選定を行った。たとえば、杉皮のライトブラウンは「陽の光が差し込む朝」、海水のコーラルピンクは「夕暮れ時」…自然の中に息づく色彩を採掘し、素材の魅力を引き出しながらも、料理のおいしさを引き立たせる色味に微調整する。 上町:食の空間や手がける料理によっても、器との相性があります。既存のシリーズではコーディネートが難しいと感じていた人にも、わくわくして手に取ってもらえるカラーバリエーションになればと思っています。ARASのコンセプトにも、モノとしての器にも納得していただけて、その器がある生活自体を愛おしく想える選択肢になることができれば、これ以上にすばらしいことはありません。 ユーザーと共につくる器 石川:わたしたちは、ARASに携わるすべての人をブランドパートナーと考え、商品開発からブランドづくりまで共に1からつくり上げることを目指しています。今回の開発は、オンライン上でのお客さまとのコミュニケーションからたくさんヒントをいただきました。すべての要望を実現できるわけではありませんが、器を手に取ってくださったお客さまお一人おひとりの背景を理解しようと努め、その中で驚きや楽しさのある一歩先の提案ができればと思っています。そういう意味では、Instagramにポストされた一つひとつのコメントが、わたしたちの原動力になっています。 自然の豊かな表情を抽出し、器へと落とし込む。それは、かつて印象派の画家たちが光に踊る色彩たちを追い求め、絵画の中に永遠の命を与えようとしたように。サステナブルコレクションの新色開発は、まさに自然の中に息づく色彩を探す旅。光と色彩を採掘する職人たちの手によって、一つひとつの器に命が吹き込まれ、地球に宿る情景が再現されてゆく。 後編へつづく インタビュー/編集:ダイアログ・デザイナー 嶋津

自然の色彩を切り取り、食卓に“選ぶ楽しみ”を【前編】 ~サステナブルコレクション「杉皮」「海水...

ARASのサステナブルコレクションから「杉皮」と「海水」に新しいカラーバリエーションが登場した。テーマは「食の情景の変化を楽しむ」。サステナブルコレクションは、食体験の進化と、環境と共生するものづくりの進化を目指し、これからの時代の豊かさをカタチにするプロダクトだ。新色の杉皮では木の風合いとぬくもりが、海水ではミネラル由来の質感と重厚感が、それぞれに有機的な表情を生み出し、料理を引き立てながら格調高い食空間を演出する 今回のjournalでは、「つくる視点」と「届ける視点」の前後編で、新商品ができるまでの工程を辿りつつ、ARASチームの想いを伺った。  石川勤/開発者(石川樹脂工業)上町達也/プロダクトデザイナー(secca)柳井友一/プロダクトデザイナー(secca) 嶋津/インタビュアー 新色展開への想い 「今日はどのお皿にしよう?」「わたしは赤にしようかな」「僕は青にしようかな」、そんな会話が一つでも生まれたら、これほど楽しいことはない──開発者の石川さんは頬をゆるめてそう話し、「お客さまに器を選ぶ楽しさを届けたい」と続けた。 石川:サステナブルコレクションは、石川樹脂工業だけでなく食器ブランドとしても前例のない試み*でしたので、発売当初はユーザーのみなさまへ受け入れていただけるか不安でいっぱいでした。いざ商品がお客さまのお手元に届くと、ARASのサステナブルの想いも含め、みなさまにあたたかく迎え入れていただけたことを実感し、胸をなでおろしました。そして、今回の新色展開へ舵を取ることができました。 カラーバリエーションが増えることで、テーブルコーディネートの幅も広がります。器を購入する時だけでなく、料理のシーンでも「どの皿が合うだろうか」と考えてもらえる。その「食器を選ぶ楽しさ」が、食体験の豊かさに繋がってゆく。もちろん、闇雲にバリエーションを増やせばいいというわけではありません。お客さまが混乱しないように配慮しつつ、食卓の幅が広がるアイテムになればと思っています。 *(注釈)「杉皮」は素材の半分を杉の皮、「海水」は海洋性ミネラルを50%以上含む素材を使用。いずれも天然由来の原料のため、製品化の際に素材による揺らぎが生まれ、一点一点の表情がすべて異なるプロダクトとなっている。 地球の情景を切り出す 新しいカラーバリエーションのテーマは「地球の情景を切り出す」。場所によってさまざまに、また時間によっても移ろう地球の豊かな表情。それらの情景を切り取って、器として食卓に並べるとすれば…イメージしてみてください。あなたはどんな地球の情景が好きですか?プロダクトデザイナーの上町さんと柳井さんが、器に落とし込む自然の色彩について解説してくれた。 「海って何色?」 上町: 一口に“海の色”と言っても、一人ひとりが思い浮かべる色彩は一つではありません。曇り空の日本海、光を蓄えたモルディブの海、環礁のある遠浅のエメラルドグリーン、深海のグランブルー、沈む夕陽に乱反射する海面…それは、生まれ育った環境や今までの経験によって異なります。まずはチーム内でイメージをしながら、色味の方向性を決めることが重要です。 柳井: 後から「見落としていた」ということがないように、最初にマトリックス上ですべての色彩パターンを洗い出し、メンバーで議論して、その中から最高の一つを見つけてゆく。このアプローチは、これまでにARASチームで培ってきた手法です。 色見表で森林や海の情景となるさまざまな色をピックアップして、「ミルクコーヒーの色に近いね」「これは瀬戸内っぽい」「孔雀釉のような色味だと料理と合うかも」とイメージをことばにして共有する。グラフィックの中で色を表現しても、モノとして形にしてみなければ実際の印象はわからない。プロトタイプをつくり、手に触れて見比べ、意見交換をして、次の試作へと反映する。そのように何度も検証を重ね、全員で「正解の色」を探求してゆく。 「おいしい色ってどんな色?」 上町:“違和感のない色”をつくりたいと思っています。基本的に食材は自然物なので、人工的な印象のある器に盛りつけると、料理と器が不和を起こしてしまいます。たとえば、器の彩度が高くなり過ぎると、ケミカルな印象を与えます。中には瑠璃色のように受け入れられやすい色味もありますが、基本的には山や海など自然の中にある色彩に近づくことができた方が違和感を取り除きやすい。 柳井:自然を見て、「汚い」と思う人はほとんどいません。それは、モノに対して抱く印象でも同じことが言えます。少しでも違和感を覚えれば、その原因はどこにあるのかを徹底的にリサーチする。その中で、メンバーたちの足並みが揃っていく感覚がおもしろいですね。 サステナブルコレクションのシリーズが登場してから、より自然との調和を意識するようになりました。僕たちデザイナーが、意図的に「絵を描く」というより、素材の持ち味を尊重し、最大限に活かすことを心がけています。 「杉皮」ではブラック、ブラウンといった森林の情景を、「海水」ではブルー、レッドといった海の情景を。どちらも時間経過によって移ろう表情に焦点を当て、色彩の選定を行った。たとえば、杉皮のライトブラウンは「陽の光が差し込む朝」、海水のコーラルピンクは「夕暮れ時」…自然の中に息づく色彩を採掘し、素材の魅力を引き出しながらも、料理のおいしさを引き立たせる色味に微調整する。 上町:食の空間や手がける料理によっても、器との相性があります。既存のシリーズではコーディネートが難しいと感じていた人にも、わくわくして手に取ってもらえるカラーバリエーションになればと思っています。ARASのコンセプトにも、モノとしての器にも納得していただけて、その器がある生活自体を愛おしく想える選択肢になることができれば、これ以上にすばらしいことはありません。 ユーザーと共につくる器 石川:わたしたちは、ARASに携わるすべての人をブランドパートナーと考え、商品開発からブランドづくりまで共に1からつくり上げることを目指しています。今回の開発は、オンライン上でのお客さまとのコミュニケーションからたくさんヒントをいただきました。すべての要望を実現できるわけではありませんが、器を手に取ってくださったお客さまお一人おひとりの背景を理解しようと努め、その中で驚きや楽しさのある一歩先の提案ができればと思っています。そういう意味では、Instagramにポストされた一つひとつのコメントが、わたしたちの原動力になっています。 自然の豊かな表情を抽出し、器へと落とし込む。それは、かつて印象派の画家たちが光に踊る色彩たちを追い求め、絵画の中に永遠の命を与えようとしたように。サステナブルコレクションの新色開発は、まさに自然の中に息づく色彩を探す旅。光と色彩を採掘する職人たちの手によって、一つひとつの器に命が吹き込まれ、地球に宿る情景が再現されてゆく。 後編へつづく インタビュー/編集:ダイアログ・デザイナー 嶋津

「ARASのある風景~SETONITEが提供する非日常の食体験~」

「ARASのある風景~SETONITEが提供する非日常の食体験~」

ARASは、宿泊地での食体験をもっと楽しく、もっと豊かにサポートする食器ブランドでありたいと考えています。今回は、グランピングの中でのARASの風景をお届けします。 舞台は、岡山県玉野市にあるプライベートリゾートSETONITE。丘を下れば、非日常の世界が迎えてくれます。目の前には瀬戸内海が広がり、やさしい潮風と穏やかな波の音に包まれ、自然の中でからだがゼロに還ってゆくのがわかります。スタイリッシュな三角形のヴィラ型テント、選び抜かれた調度品とこだわりの料理、そして、内側に眠った野性を喚起する体験の数々。SETONITEの支配人、綾部健二郎さんにお話をお伺いしました。 もっと特別な瀬戸内を。  ──SETONITEさんのコンセプトについて聴かせてください。 綾部 施設のコンセプトには、「もっと特別な瀬戸内を。」を掲げ運営をしています。既に世界中から注目を集めている瀬戸内ですが、地域に眠る宝はまだたくさんあります。“もっと”が付くのは、SETONITEでの特別な体験はもちろんのこと、瀬戸内の魅力を最大限に体感していただける施設でありたいという想いが根底にあります。 さらには、わたしたちが地域に眠る宝の情報をお客さまに発信することで、お客さまが地域を巡っていただき、実際にそれらの魅力に触れてもらう。自分たちの利益だけでなく、「玉野よかったね」、ひいては「岡山よかったね」と思ってもらえる循環を生み出したいと思っています。 「WOW」のデザイン 「訪れたお客さまに驚きを提供したい」と穏やかな口調で話す綾部さん。SETONITEに到着したその瞬間から驚きが次々と出迎えてくれます。インフィニティプール、バレル型サウナ、キャンプファイヤー…非日常が息づく世界観は、「ここでしか味わえない」の極致です。そこには、至るところに設計された「WOW」に秘密がありました。 ──綾部さんにとって理想的な宿泊体験とはどのようなものでしょうか? 綾部 お客さまの滞在期間中に何回「ワオ(WOW)」と言ってもらえるか。それを大事にしたいと常々スタッフにも言っています。ハード面は、すべて「WOW」の一環です。瀬戸内海を一望できるインフィニティプール、セルフロウリュを行えるバレル型サウナ、星空を眺めながら外気浴を味わえるインフィニティチェア、夜を彩るキャンプファイヤー…それらは、わたしたちの根底にある驚きの一端を担ってくれていることには間違いありません。数多くの「WOW」を体験してもらうことが感動につながり、それがSETONITEの評価につながっていると思っています。 施設を訪れた瞬間、景色を見た瞬間、部屋に入った瞬間、料理の一皿一皿、スタッフのおもてなし…さまざまなシーンで驚きを提供するためには、ハードは当然のこと、ソフトにもこだわりを見せています。「WOW」を演出する一つひとつのセレクト。そこには、SETONITEの思想と美意識が現れています。まさに、神は細部に宿る── 綾部 おかげさまで、ハードはすばらしいものが完成しました。それに準じて、セレクトした家具や家電などの調度品、アメニティにも同じ空気感を味わっていただきたいと思い、一つひとつ吟味しました。SETONITEのコンセプトに共感してくださったお客さまには、ディティールにも満足してもらいたい。その最たるものが器だと思っています。 「WOW」を演出するARASの器 綾部 わたしは器を含めて、料理だと思っています。つまり、盛り付けるお皿は、驚きを演出するために一役買ってくれるもの。ARASの器は高級感があり、使いやすく「割れない」という機能性もある。何より、料理が映える器だと思っています。特に、スモークカラーの洗練された“抜け感”は、ラグジュアリーかつ非日常なムードを求めたお客さまの期待に応えてくれています。 ──ARASを採用した理由をお聴かせください。 綾部 Instagramの広告で見かけ、「センスがいい器だな」と思ったのが最初の印象です。まだ、宿泊事業を立ち上げる前のことでした。その時はそのままになっていたのですが、SETONITEをはじめ、どのような器で料理を提供しようとかシェフと話し合っていた時にふと思い出しました。正直に言うと、ブランド名は思い出せなかったのですが「1000回落としても割れないお皿」というコピーが頭の片隅に残っていた。そのキーワードを検索して、無事購入に至りました。 SETONITEの立ち上げの際に、視察を含めて数々のグランピング施設を訪れた綾部さん。その中で、食器までこだわっている施設はそこまで多くなかったと言います。さらには、過去の経験からグランピングに関わらず、宿泊先での食事に対してポジティブな印象を抱くことが少なかったことに気付きました。それがそのまま宿泊体験の評価につながる。綾部さんは、効率性や合理性より、ピュアに“おいしい料理”を提供することを決めます。お客さまに食を宿泊の一部として楽しんでもらうために。 ──SETONITEの豊かな食体験とはどういうものでしょう? 綾部 温かいものは温かく、冷たいものは冷たく。SETONITEから見える景色と共に、最高のコンディションで食べていただくこと。食材は、地産地消を意識した新鮮な野菜や魚を使用しています。地域の食材の背景にある物語や知識を添えることで、料理の味わいはさらに芳醇になります。ひいては、玉野を知ってもらうきっかけにもなる。 それが前提としてあり、その+αになるものがSETONITEらしい空気感。食器は全体のクオリティを引き上げてくれるアイテムの一つです。グランピング自体が「グラマラス」と「キャンピング」で、「贅沢なキャンプ」という位置づけで生まれた言葉ですので、アウトドアを期待されているお客さまも一定数いらっしゃいます。ホテル寄りになり過ぎず、キャンプ寄りになり過ぎず、バランスの取れたエレガントな提供が望ましい。そういう意味では、ARASの器は、料理全体の雰囲気をホテルライクに引き上げてくれます。普段からよくグランピング施設を利用されるお客さまのアンケートの回答をお借りすると、「グランピングはほったらかし系と至れり尽くせり系があり、SETONITEさんは後者のトップクラスだと思います」とご評価いただいたことがあります。わたしたちにとってもそれはとてもうれしいお言葉でした。 またアウトドアとしては、屋外スペースでの食事となりますので、「落としても割れない」という機能性はやはり魅力的です。さらに言えば、今や観光業は最先端の産業となり、世界の潮流としてサステナブルの要素は欠かせません。ARASは、その面でもサポートしてくれる心強いアイテムです。 宿泊施設は、人 SETONITEが提供する驚きの中で、欠かせないものは料理と“人”。スタッフのおもてなしについての想いをお伺いしていると、「なぜこの場所を訪れたくなるのか」の本質が浮き上がってきました。 綾部...

「ARASのある風景~SETONITEが提供する非日常の食体験~」

ARASは、宿泊地での食体験をもっと楽しく、もっと豊かにサポートする食器ブランドでありたいと考えています。今回は、グランピングの中でのARASの風景をお届けします。 舞台は、岡山県玉野市にあるプライベートリゾートSETONITE。丘を下れば、非日常の世界が迎えてくれます。目の前には瀬戸内海が広がり、やさしい潮風と穏やかな波の音に包まれ、自然の中でからだがゼロに還ってゆくのがわかります。スタイリッシュな三角形のヴィラ型テント、選び抜かれた調度品とこだわりの料理、そして、内側に眠った野性を喚起する体験の数々。SETONITEの支配人、綾部健二郎さんにお話をお伺いしました。 もっと特別な瀬戸内を。  ──SETONITEさんのコンセプトについて聴かせてください。 綾部 施設のコンセプトには、「もっと特別な瀬戸内を。」を掲げ運営をしています。既に世界中から注目を集めている瀬戸内ですが、地域に眠る宝はまだたくさんあります。“もっと”が付くのは、SETONITEでの特別な体験はもちろんのこと、瀬戸内の魅力を最大限に体感していただける施設でありたいという想いが根底にあります。 さらには、わたしたちが地域に眠る宝の情報をお客さまに発信することで、お客さまが地域を巡っていただき、実際にそれらの魅力に触れてもらう。自分たちの利益だけでなく、「玉野よかったね」、ひいては「岡山よかったね」と思ってもらえる循環を生み出したいと思っています。 「WOW」のデザイン 「訪れたお客さまに驚きを提供したい」と穏やかな口調で話す綾部さん。SETONITEに到着したその瞬間から驚きが次々と出迎えてくれます。インフィニティプール、バレル型サウナ、キャンプファイヤー…非日常が息づく世界観は、「ここでしか味わえない」の極致です。そこには、至るところに設計された「WOW」に秘密がありました。 ──綾部さんにとって理想的な宿泊体験とはどのようなものでしょうか? 綾部 お客さまの滞在期間中に何回「ワオ(WOW)」と言ってもらえるか。それを大事にしたいと常々スタッフにも言っています。ハード面は、すべて「WOW」の一環です。瀬戸内海を一望できるインフィニティプール、セルフロウリュを行えるバレル型サウナ、星空を眺めながら外気浴を味わえるインフィニティチェア、夜を彩るキャンプファイヤー…それらは、わたしたちの根底にある驚きの一端を担ってくれていることには間違いありません。数多くの「WOW」を体験してもらうことが感動につながり、それがSETONITEの評価につながっていると思っています。 施設を訪れた瞬間、景色を見た瞬間、部屋に入った瞬間、料理の一皿一皿、スタッフのおもてなし…さまざまなシーンで驚きを提供するためには、ハードは当然のこと、ソフトにもこだわりを見せています。「WOW」を演出する一つひとつのセレクト。そこには、SETONITEの思想と美意識が現れています。まさに、神は細部に宿る── 綾部 おかげさまで、ハードはすばらしいものが完成しました。それに準じて、セレクトした家具や家電などの調度品、アメニティにも同じ空気感を味わっていただきたいと思い、一つひとつ吟味しました。SETONITEのコンセプトに共感してくださったお客さまには、ディティールにも満足してもらいたい。その最たるものが器だと思っています。 「WOW」を演出するARASの器 綾部 わたしは器を含めて、料理だと思っています。つまり、盛り付けるお皿は、驚きを演出するために一役買ってくれるもの。ARASの器は高級感があり、使いやすく「割れない」という機能性もある。何より、料理が映える器だと思っています。特に、スモークカラーの洗練された“抜け感”は、ラグジュアリーかつ非日常なムードを求めたお客さまの期待に応えてくれています。 ──ARASを採用した理由をお聴かせください。 綾部 Instagramの広告で見かけ、「センスがいい器だな」と思ったのが最初の印象です。まだ、宿泊事業を立ち上げる前のことでした。その時はそのままになっていたのですが、SETONITEをはじめ、どのような器で料理を提供しようとかシェフと話し合っていた時にふと思い出しました。正直に言うと、ブランド名は思い出せなかったのですが「1000回落としても割れないお皿」というコピーが頭の片隅に残っていた。そのキーワードを検索して、無事購入に至りました。 SETONITEの立ち上げの際に、視察を含めて数々のグランピング施設を訪れた綾部さん。その中で、食器までこだわっている施設はそこまで多くなかったと言います。さらには、過去の経験からグランピングに関わらず、宿泊先での食事に対してポジティブな印象を抱くことが少なかったことに気付きました。それがそのまま宿泊体験の評価につながる。綾部さんは、効率性や合理性より、ピュアに“おいしい料理”を提供することを決めます。お客さまに食を宿泊の一部として楽しんでもらうために。 ──SETONITEの豊かな食体験とはどういうものでしょう? 綾部 温かいものは温かく、冷たいものは冷たく。SETONITEから見える景色と共に、最高のコンディションで食べていただくこと。食材は、地産地消を意識した新鮮な野菜や魚を使用しています。地域の食材の背景にある物語や知識を添えることで、料理の味わいはさらに芳醇になります。ひいては、玉野を知ってもらうきっかけにもなる。 それが前提としてあり、その+αになるものがSETONITEらしい空気感。食器は全体のクオリティを引き上げてくれるアイテムの一つです。グランピング自体が「グラマラス」と「キャンピング」で、「贅沢なキャンプ」という位置づけで生まれた言葉ですので、アウトドアを期待されているお客さまも一定数いらっしゃいます。ホテル寄りになり過ぎず、キャンプ寄りになり過ぎず、バランスの取れたエレガントな提供が望ましい。そういう意味では、ARASの器は、料理全体の雰囲気をホテルライクに引き上げてくれます。普段からよくグランピング施設を利用されるお客さまのアンケートの回答をお借りすると、「グランピングはほったらかし系と至れり尽くせり系があり、SETONITEさんは後者のトップクラスだと思います」とご評価いただいたことがあります。わたしたちにとってもそれはとてもうれしいお言葉でした。 またアウトドアとしては、屋外スペースでの食事となりますので、「落としても割れない」という機能性はやはり魅力的です。さらに言えば、今や観光業は最先端の産業となり、世界の潮流としてサステナブルの要素は欠かせません。ARASは、その面でもサポートしてくれる心強いアイテムです。 宿泊施設は、人 SETONITEが提供する驚きの中で、欠かせないものは料理と“人”。スタッフのおもてなしについての想いをお伺いしていると、「なぜこの場所を訪れたくなるのか」の本質が浮き上がってきました。 綾部...

ARASのある風景~ OMO(おも) by 星野リゾートが提供する「豊かな食体験」~

ARASのある風景~ OMO(おも) by 星野リゾートが提供する「豊かな食体験」~

ARASは、宿泊地での食体験をもっと楽しく、もっと豊かにサポートをする食器ブランドでありたいと考えております。 星野リゾート様が運営する「OMO(おも)」では、ARASのアイテムをご愛用いただいております。OMOとは、星野リゾートが運営する全く新しいスタイルの都市ホテルブランド。「テンションあがる『街ナカ』ホテル」をコンセプトに、“街を楽しむ”という視点から、新しい宿泊体験をお届けしています。 今回は、ホテルにおけるARASの風景を。OMOが考える宿泊と食体験について、OMO by 星野リゾート京都エリア総支配人の唐澤武彦さんに、お話を聴かせていただきました。 「OMO5京都祇園  by  星野リゾート」はl2021 年 11 月 5 日に開業。「OMO3京都東寺」「OMO5京都三条」に続き、京都では 3 軒目。八坂神社を中心とした門前町、花街ならではの華やかな街並みが広がる風景──祇園で暮らすような滞在を通して、街の芸術・文化をどっぷり楽しむ旅を提案している。   「テンションあがる『街ナカ』ホテル」 ──OMOさんのコンセプトについてお聴かせください。 唐澤 我々、星野リゾートはこれまでに“リゾート”として海や山、温泉地など地方を中心に展開してきました。ただ、市場調査を続ける中で、都市部にも観光に訪れるお客様が多いことがわかりました。 都市部における宿泊はシティホテルやビジネスホテルが中心です。調査の結果として、複数の「ビジネスホテルに不足はないが、テンションはあがらない」という回答と出会いました。ならば、宿泊体験の中に“テンションがあがる”要素を盛り込んでみてはどうだろうと、「テンションあがる『街ナカ』ホテル」というコンセプトが生まれました。 OMOブランドのはじまりは、そこにあります。 ゲストにとって不足はないが、そこには予想を上回るワクワクはない。そこに大きなヒントがありました。 OMOは、都市部の宿泊体験に、新しい可能性を提案する。 それが、他社との差別化につながり、オリジナリティとしてかがやきだす。  唐澤 街全体を一つのリゾートと見立て、 “街”を存分に楽しんでいただく。お客様には、街へ出向いてたっぷりと観光していただき、その中で我々は宿泊をまかなう。 より豊かで、ディープな体験を味わっていただくために、街の魅力を紹介することに注力する。そうすることで、ここでしか味わえない体験を提供できます。  OMO  ブランドの共通サービス「Go-KINJO」では、ホテルから徒歩圏内の“街”を熟知した「ご近所ガイド  OMOレンジャー」が旅のサポートをしてくれる。ガイドブックには載っていないタイムリーな情報を集めたり、実際にお客様をガイドツアーにお連れするサービスも。初めてその街に訪れた人でも、地元の人が普段楽しんでいるようなディープな体験を味わうことができます。   「ホテルの中だけでは終わらせない」 ──OMOさんにとって理想的な食体験とは? 唐澤 お客様に地域の料理や食材を楽しんでいただくことが一番だと思っています。理想的な在り方としては、ホテルの中だけでは終わらせない体験を提供すること。もちろん、我々も地域の料理を提供しますが、やはりゲストのみなさまには街へ出歩いていただきたい。地域の店に足を運んでいただいたり、テイクアウトしてホテルで楽しんでいただくことも選択肢の一つ。カタチにこだわらず「食」の提供スタイルをたくさん提案できるほうが、よりテンションのあがる旅を楽しんでいただけるのではないでしょうか。  ARASとの親和性 OMO5京都祇園では、ARASの器から小皿スロープ、中皿ウェーブ、マグカップ小、汁椀が採用された。カラーはピンクグレーとグレー、ホワイトの三色。唐澤さんは「“実”の部分と、コンセプトに共感した」と話してくれました。  ──ARASを採用した理由についてお聴かせください。 唐澤...

ARASのある風景~ OMO(おも) by 星野リゾートが提供する「豊かな食体験」~

ARASは、宿泊地での食体験をもっと楽しく、もっと豊かにサポートをする食器ブランドでありたいと考えております。 星野リゾート様が運営する「OMO(おも)」では、ARASのアイテムをご愛用いただいております。OMOとは、星野リゾートが運営する全く新しいスタイルの都市ホテルブランド。「テンションあがる『街ナカ』ホテル」をコンセプトに、“街を楽しむ”という視点から、新しい宿泊体験をお届けしています。 今回は、ホテルにおけるARASの風景を。OMOが考える宿泊と食体験について、OMO by 星野リゾート京都エリア総支配人の唐澤武彦さんに、お話を聴かせていただきました。 「OMO5京都祇園  by  星野リゾート」はl2021 年 11 月 5 日に開業。「OMO3京都東寺」「OMO5京都三条」に続き、京都では 3 軒目。八坂神社を中心とした門前町、花街ならではの華やかな街並みが広がる風景──祇園で暮らすような滞在を通して、街の芸術・文化をどっぷり楽しむ旅を提案している。   「テンションあがる『街ナカ』ホテル」 ──OMOさんのコンセプトについてお聴かせください。 唐澤 我々、星野リゾートはこれまでに“リゾート”として海や山、温泉地など地方を中心に展開してきました。ただ、市場調査を続ける中で、都市部にも観光に訪れるお客様が多いことがわかりました。 都市部における宿泊はシティホテルやビジネスホテルが中心です。調査の結果として、複数の「ビジネスホテルに不足はないが、テンションはあがらない」という回答と出会いました。ならば、宿泊体験の中に“テンションがあがる”要素を盛り込んでみてはどうだろうと、「テンションあがる『街ナカ』ホテル」というコンセプトが生まれました。 OMOブランドのはじまりは、そこにあります。 ゲストにとって不足はないが、そこには予想を上回るワクワクはない。そこに大きなヒントがありました。 OMOは、都市部の宿泊体験に、新しい可能性を提案する。 それが、他社との差別化につながり、オリジナリティとしてかがやきだす。  唐澤 街全体を一つのリゾートと見立て、 “街”を存分に楽しんでいただく。お客様には、街へ出向いてたっぷりと観光していただき、その中で我々は宿泊をまかなう。 より豊かで、ディープな体験を味わっていただくために、街の魅力を紹介することに注力する。そうすることで、ここでしか味わえない体験を提供できます。  OMO  ブランドの共通サービス「Go-KINJO」では、ホテルから徒歩圏内の“街”を熟知した「ご近所ガイド  OMOレンジャー」が旅のサポートをしてくれる。ガイドブックには載っていないタイムリーな情報を集めたり、実際にお客様をガイドツアーにお連れするサービスも。初めてその街に訪れた人でも、地元の人が普段楽しんでいるようなディープな体験を味わうことができます。   「ホテルの中だけでは終わらせない」 ──OMOさんにとって理想的な食体験とは? 唐澤 お客様に地域の料理や食材を楽しんでいただくことが一番だと思っています。理想的な在り方としては、ホテルの中だけでは終わらせない体験を提供すること。もちろん、我々も地域の料理を提供しますが、やはりゲストのみなさまには街へ出歩いていただきたい。地域の店に足を運んでいただいたり、テイクアウトしてホテルで楽しんでいただくことも選択肢の一つ。カタチにこだわらず「食」の提供スタイルをたくさん提案できるほうが、よりテンションのあがる旅を楽しんでいただけるのではないでしょうか。  ARASとの親和性 OMO5京都祇園では、ARASの器から小皿スロープ、中皿ウェーブ、マグカップ小、汁椀が採用された。カラーはピンクグレーとグレー、ホワイトの三色。唐澤さんは「“実”の部分と、コンセプトに共感した」と話してくれました。  ──ARASを採用した理由についてお聴かせください。 唐澤...